BtoB家具というニッチな業界のDXをリードするカグポン
「私たちのように新規事業に取り組む側は、事業が成功するかどうか予測が難しいリスクを抱えることになります。このため、ベンダーさんとクライアントの間には、認識の差が生じやすいものです。私たちが開発を行う目的は、製品を作ることではなく、事業を成功させるためです。その点で、RITさんはこの温度差や開発の目的をしっかり理解され、事業の成功という最終目標に共感していただいているところが、他社との大きな違いだと感じています。」
そう語るのは、株式会社アダル経営企画部IT事業室 室長太田幸雄氏だ。今回、RITが開発を手掛けたアダル社の新規事業「カグポン」は、3Dシミュレーター、テレビ会議システム、見積作成などの多機能がオールインワンになった営業支援ツールだ。
「我々、アダルは業務用家具メーカーとして、商業施設や公共施設、医療機関など、さまざまな施設に対し、椅子やテーブルなどの製造卸販売をしている会社です。今まで営業担当は、お客様から“壁紙や床の色、こういう家具をこれぐらいの予算で入れたい”というようなご要望を受けて、図面を持ち帰り、フェーズごとにパワーポイントをはじめ、いろいろなソフトを使って提案書を作成することを3〜4回繰り返していました。それが営業メンバーの負担になっており、この部分を効率化するために、カグポンのプロジェクトが始まりました。」
当初、アダル社では別のベンダーとカグポンの開発を進めていた。0→1で新しいものを開発する、今世の中にないものを作るということでスタートを切ったが、いざ開発を始めると、要件を満たすものがなかなか上がってこず、事業開発が停滞することとなった。開発がスタートしてから半年ほど経ち、カグポンの置かれている状況を知った知人に紹介されたのがRITだったという。
3Dシミュレーターを取り入れた直感的操作で営業効率化に成功
「営業の負荷を減らすことが今回のコンセプトでした。古い業界体質なこともあり、DXは他業種と比べると遅れています。複数のツールを立ち上げることで、ストレスを感じたり混乱する人も社内には一定数いるのです。そういった面ではオールインワンかつ機能も絞ってあるので、非常に使いやすいものに仕上がりました。」
カグポンは、営業担当者が直感的に操作できるよう設計されている。平面図をカグポンに読み込ませ、3Dシミュレーター上で家具を配置するだけで、簡単にレイアウトが作成できる。また、TV会議機能が搭載されており、オンラインでクライアントと会話をしながら、Googleスプレッドシートのように双方が同時にレイアウトを編集することが可能である。さらに、見積もり機能とも連動しており、家具を変更すると自動的に見積もり金額が更新されるため、営業担当の手間が大幅に削減された。
「カグポンを導入する際、RITが気を配ってくれたところの一つに、“営業担当者が普段使っているパソコンでも、ストレスなくスムーズに3Dシミュレーションが操作できるようにすること”があります。営業で使うパソコンは、特別に高性能なものではないので、オフィスソフトが動く程度のスペックで、3Dシミュレーターが快適に動くようにと、RITは徹底的に軽量化と最適化を進めてくれました。その結果、現在の設備をそのまま利用でき、私たちのコストも抑えられたので非常に助かりました。こうしたユーザー視点での対応が、他のベンダーにはないRITの大きな強みだと感じています。」
他にも、請求書の発行やリマインド機能、請求書払いをはじめ、BtoBゆえのカード決済以外の決済方法が必要だったが、RITはビジネスへの理解や知見があるので、かゆいところに手が届くような提案をしてくれるので助かったと、太田氏は語る。
開発の枠を超えた新規事業のプロフェッショナルとして頼れる存在
株式会社アダル経営企画部IT事業室 室長太田幸雄氏
「今後についても、保守だけではなく追加開発を進めていきます。やはりこういったSaaSサービスは常にアップデートが必要です。そういったところで、RITさんとは週1の打ち合わせを持ち、弊社の販売状況を共有して、どうやって売っていこうかというところも一緒に考えています。RITさんをシステム開発会社というくくりにするのはもったいない。弊社では開発会社という立ち位置ではなく、事業を成功させるための重要な戦略パートナーとして捉えています。」
新規事業や開発の専門家ではない側が専門家の意見を求めたときに、意見がなかなか出てこない会社が多い。しかし、RITの場合は、「それは何のために作るのか?」「こういうものを入れた方がより便利ではないか?」と、さまざまな意見を言ってくれる。単なる御用聞きではなく、共に考えてくれるところがありがたい。またRITは新規事業のコンサルティングから開発まで行う会社だ。我々が「こんなビジネスをしたい」と伝えると、その意図をしっかりと汲み取り、それに合わせて開発の内容や優先順位を決めてくれるところがRITの魅力であると、太田氏は言う。
5月に行われた家具業界の主要イベントでカグポンを紹介したところ、デジタルツールという物珍しさもあって、デモンストレーションには行列ができた。しかし、掴みは良かったものの、逆に物珍しすぎて、上長にどのように説明してよいのか分からないという顧客の声があり、クロージングへの課題もあるという。
家具業界のなかでもBtoBの家具業界はかなりニッチな業界である。デジタル化があまり進んでいないので、ある意味ビジネスとしては、ブルーオーシャンである。RITは、今後もアダル社の成長と課題解決のサポートをし、デジタル化の波をともに切り拓いていく。
プロジェクト概要
クライアント名 | 株式会社アダル |
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PJカテゴリ |
プロジェクトメンバー
窪内 慎吾
デザイナー
喜多 遼司
エンジニア
横山 大地
エンジニア
三浦 航平
エンジニア
安武 遼太
代表取締役